

ミルラの植物について
ミルラはフランキンセンスと同じカンラン科の植物で、香として焚かれる芳香植物が多く属しています。
精油として使用されるのは Commiphora molmol。
- 原産地:イエメン、サウジアラビア、エリトリア
- 現在の主な産地:インド、ソマリア、エチオピア
(風ら花の使用精油:ソマリア産) - 樹高:2〜3mの低木で棘がある
- 花:8月末に白色・緑色の花を咲かせる
- 別名:没薬(もつやく)、マー
石が多い乾燥した土地でたくましく育つ植物です。


ミルラ精油の香り
ナード(NARD)アロマテラピー協会の精油事典では
「温かみがありスパイシー、ムスクのような深い香り」
と表現されています。
個人的な印象としては、古い救急箱を開けたときの消毒臭と、古代アラビアに迷い込むようなミステリアスさが同居しており、どこか“ビンテージ感”を感じさせます。
まさに「神秘」という言葉がぴったりの香りです。
成分と作用とブレンド例
主成分
- セスキテルペン炭化水素類+(プラス)(約76%)
→ 強壮作用、刺激作用 - セスキテルペン炭化水素類−(マイナス)(約8%)
→ 鎮静作用、抗炎症作用 - セスキテルペンアルコール類(約1%)
→ ホルモン調整作用、鬱血除去作用、強壮作用、刺激作用
最も多いのは“+”の炭化水素類で、エネルギー不足のときに元気を取り戻す働きがあります。
一方、“−”の成分は含有量は少なくても 肌荒れやあかぎれのケアに有用 で、リップやハンドクリーム作りによく使用します。
ハンドクリームのブレンド
- シアバター 10g
- ミルラ 2滴
- ラベンダー・アングスティフォリア 4滴
ミルラの精神的作用とブレンド例
ミルラは樹脂を水蒸気蒸留して得られる精油で、樹脂は「樹木が傷を修復するための涙」。
象徴的に 心の傷を癒す 作用としても古くから用いられてきました。
- 悲しみ
- パニック、不安
- 喪失感
- 別離(失恋・離婚)
こうした心の痛みに寄り添う精油です。
傷ついた心を癒すブレンド例
- 植物油5ml
- ミルラ1滴
- ローズ1滴
使い方:胸元や手首に塗布し、ゆっくり吸入して使います。
歴史に見るミルラ
古代エジプト
ミルラはミイラの防腐処置に使われたことで非常に有名です。
ミイラ(mummy)の語源がミルラという説もあります。
防腐作用・殺菌作用をもつミルラとフランキンセンスは、
「来世で復活するために肉体を保存する」 という古代エジプトの死生観において不可欠でした。
さらに薫香・医薬としても用いられ、王侯貴族の間では黄金と同等の価値で取引されていたとも言われています。
聖書の記述
新約聖書では、キリスト誕生の際に東方の三賢者が“黄金・乳香(フランキンセンス)・没薬(ミルラ)”を捧げたと記されています。
そのことからミルラは古代から特別な植物として扱われてきたことがよく分かります。
ミルラ精油の特徴と注意点

粘度が非常に高い
ミルラは重く粘度が高いため、外蓋と内蓋が一緒に外れる事故が非常に起きやすい 精油です。
私自身、内蓋が取れた状態に気づかず、ティッシュの上へ傾けてしまい、10ml瓶の半分近く(5ml)が一度に流れ出たことがあります。
発火の危険性
大量のミルラを含んだティッシュを放置した結果、翌朝、ティッシュと畳が焦げて煙が出ていた
という実体験があります。
少量ではこのようなことは起きないかもしれませんが、ミルラは発火点が低いため、量がおおいと引火性が高まります。
- 大量の精油をティッシュに吸わせたまま放置しない
- ミルラを使用したタオルは 乾燥機に入れない
安全に使うために必ずご注意ください。
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